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年賀

あけましておめでとうございます。
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by babolna | 2008-12-31 19:06  

馬と鉄砲と女は-2

馬と鉄砲と女
「大村さん、馬が欲しいのなら、ハンガリーに一緒に行こうか。」
他ならぬ、当時の会社グループの総師、阪本精造氏からの誘いがあった。
初めてバボルナを訪ね、アラブ馬に出会った時の感動は、薄れるどころか、時を追って募るばかりの私に、この誘いを断る理由など全くなかった。
一九八七年十月、再びヨーロッパへ。
フランスで鴨の産業を見学し、ドイツのブレーメンにある、ドクター・ナーゲルの種鶏場を見学した。
私たちは、日本の茅葺き屋根の造りによく似た郊外の彼の別荘に招待され、彼のご令嬢、キャサリンさんの手作りのケーキをご馳走になった。
そして、別荘の広大な牧場には、目を見張らんばかりの、手入れの行き届いた純血アラブが飼育されており、その中の数頭の種牡馬を鑑賞させてもらった。
その中の一頭に、「乗ってみるか?」とドクター・ナーゲルに促されたが、気高いアラブの牡馬の気迫と美しさに、ただ見とれるだけであった。
十月二十四日夜、ハンガリー、バボルナ牧場の宿舎に入った。
翌朝、広くて長いテーブルを挟んでミーティングが始まった。
中央にハンガリー政府のバボルナ担当ドクター・ブルゲルト(大臣に相当する地位と説明された。)、農場長のドクター・ナギー、そして、育種(品種改良)を担当しているドイツ人の遺伝学者ドクター・ローレンツ他。
当方は、テトラクロス・ジャパンの阪本精造氏以下数名。
挨拶や商談で予定の時間は瞬く間に過ぎようとしていた。
私「アラブ馬を譲渡してほしい。」
ドクター・ブルゲルトは議題になかった唐突でバボルナにとって余り有り難くない申し出であったらしく、最初は取り合いたくない感じで話を逸らそうとしていたが、時間の経過も気がかりなのかしばし沈黙のあと「ハンガリーには『馬と鉄砲と女は選択を誤ると大変なことになる』という諺があります。あなたが馬を選びますか?」
私「馬の国に来て馬を選ぶようなことは考えていません。馬の国の貴方が選んでくれた馬なら、どれでも結構です。」(咄嗟に浮かんだ言葉であったが、彼の心を動かしたのか、)
ドクター・ブルゲルト(農場長ドクター・ナギーに対し)「この人の希望を叶えてやりなさい。」
この「鶴の一声」で、私に対するすべての権限は農場長ドクター・ナギーに委譲されたようであった。
ドクター・ローレンツが言った。「今から、大村さんの時間が始まる。」
その時、私にはその意味がよく理解できてはいなかった。中庭の方でラッパの音が聞こえてはいたが。
「バルコニーに出て下さい。」案内に従い、銃眼をかたどった城壁に囲まれたバルコニーに出た。真下に見える円形の芝生の中央に噴水があり、勢いよく水を噴き上げていた。芝生の外周はパドック(砂を敷き詰めた馬車の道)になっていた。
現われたのは黒い馬。馬上の騎手は器用に二個の太鼓をたたいていた。続いて八頭の白馬。騎兵隊の軍装をしたファンファーレ隊を乗せた行進は、まさにお伽の国そのものであった。
騎兵隊の行進が終わったあと、パドックに案内された私たちの前に、五頭立ての馬車が二台、二頭立てが数台用意された。各々、分かれて馬車に乗ることになったが、中世のヨーロッパにタイムスリップしたような錯覚を覚えるもてなしであった。
阪本氏と私を先頭の馬車の後方客席に案内すると、ドクター・ブルゲルトは、御者のとなりに着席、パドックを一周させてくれた。優雅な気分に酔いしれた至福の時であった。
伝統のシャギア アラブと熟練されたバボルナホースマンたちによって繰り広げられた華麗な歓迎のセレモニーは、私にとって二度と経験できない終生忘れがたい思い出を創ってくれた。
この素晴らしい思い出をプレゼントしてくれたドクター・ブレゲルト・ロバートをはじめ、バボルナの皆さんのご厚意に深く感謝申し上げたい。
翻って、
*シャギア アラブについて。
一七八九年、ハンガリー国立牧場バボルナ創立以来、在来種にアラブ種を交配しながら品種改良を進めてきたシャギア アラブは軍用馬として世界的に有名である。
昭和天皇の御料馬「白雪」や名画「アルプス越え」で有名なナポレオン一世の愛馬は、この牧場の産として知られている。
軍馬の必要性が少なくなった近年では、式典や長距離耐久レース等で活躍している。                                 
*翌朝、馬の譲渡に関する権限を委譲された農場長から、シャギア アラブとエジプトアラブのどちらが欲しいのかと迫られた。選択を迫られた私は、バボルナが二〇〇年にも及んで改良を進めてきたシャギア アラブにするか、シャギア アラブの改良のために継続的にアラブ世界から導入しているエジプト系純血種にするか、決断しなければならない事になった。
「エジプトアラブをお願いしたい。」と即断したことが間違いであったとは、今でも思ってはいない。
高貴で美しい生き物が海を越え、私のもとにやって来るのであるから。
一九八七年十月二六日朝、ブダペストのホテルの窓からはドナウの対岸に聳える王宮や、この大河を跨ぐクサリ橋が、私の新しい未来を祝福してくれているかのようにドナウの川面に輝いていた。
「交渉がまとまるまで会議を終わらせないように」と私と示し合わせて交渉を成功に導いた阪本会長の子息で通訳を務めてくれた阪本徹君の功績を忘れる訳にはいかない。
*ドクター・ナギー「あなたの国の馬の役所のH氏から種牡馬の購入の申し出がありましたが取引は成立していないので承知しておいて下さい。」
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by babolna | 2008-12-27 13:53 |  

赤いタマゴ(テトラエッグ)の故郷-2

テトラエッグの故郷
『人は生涯で三度のチャンスに出逢う』とか言うが私にとって、これはそのひとつかも知れない。
一九八六年九月、当時、すでに飼育をはじめていた赤いたまご「テトラエッグ」の故郷であるハンガリー国立バボルナ牧場に通訳氏を入れて三名で表敬訪問したときのことであった。
そこは、およそ二〇〇年前、ハンガリー国軍によって創設され、以来、アラブ種を導入しながら軍用馬(シャギア アラブ)の品種改良を進めてきているが、第二次世界大戦後は、鶏や豚などの品種改良も手がけて充分な成果を上げている国営企業であった。
バボルナの本部は二〇〇メートル×一〇〇メートルくらいの中庭を、石造りの厩舎と本部事務所が、まさに砦のように取り囲んでいる。さらに、その中庭の中央には綺麗に整備の行き届いた屋内馬場があり、隣接して二〇室ほどの二階建ての宿舎があった。私たちはその宿舎で、ハンガリーでの最初の夜を迎えようとしていた。
夕刻の運動なのか、夕日を浴びながら若者を背に、ゆっくりと、そして軽やかに厩舎に向かって帰って行く馬たちが通り過ぎていった。 
「心を揺さぶる美しい生き物!」全く想像もしていなかった生き物がそこにいたのである。私はその時、自制心を失いつつある自分を感じていた。
馬である。サラブレットではない。日本では図鑑でしか見ることが出来なかった、高貴な品格を漂わせたアラブの純血種が、ここにいたのである。
翌朝、バボルナの美しい馬たちを、日本に輸入することは出来ないかと思いつつ、農場のマネージャー、ツー氏に、当日のスケジュールにはなかったアラブの子馬たちの放牧地の見学を願い出た。快く承知してくれた彼の案内で仔馬の放牧地に行き、彼が指さした彼方をよく見ていると、砂塵を巻き上げながら近づいてくる一群があった。紛れもなくアラブの子馬たちである。私は何事もなかったように草を食べ始めた子馬の群れの中に入らずにはおられなくなっていた。
闖入者に興味があるのか、私の周りに集まった仔馬たちは人懐っこく私に顔を摺りよせたり、鼻先で押したりして、楽しいひとときを過ごさせてくれた。
このとき、すでに私の体の中で膨らみかけた、この馬たちへの思いは、もう鎮めようがなかった。
私「子馬を譲っていただけませんか。」
ツー氏「馬は売り物ではありません。」
私「そこを何とか。」
ツー氏「馬は私の権限外です。どうしようもありません。」
私の執拗な願いに業を煮やしたのか、最後に「アイ・ドント・ノー」といって拒絶した彼の言葉は、今でも強烈に私の脳裏に焼き付いている。この言葉は、英語が苦手な私にも、通訳の必要はなかった。
創設以来、約二〇〇年の歳月をかけて進めてきた品種改良によって為しえた、この国の最も貴重な文化遺産のひとつと聞きながら、割譲を申し入れた自分の行為を恥じながらも、引き下がることが出来なかった。
、今思えばこのときすでに、「アラブ馬の虜」になっていたのであろう。
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by babolna | 2008-12-27 05:25